岡ようご崎ます!
本読みましたシリーズ、つまり読書録です。
今回は、今関心のある断熱についての本。
『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』
/ 高橋真樹(Takahashi Masaki)
この本を読みながら学んだことをこれまでの復習も兼ねて書き記します。
家の燃費を無視した損失
・家庭内の事故で亡くなっている
・窓の結露でカビが増えアレルギーが悪化
・光熱費・修繕費で家もう一軒買える など
諸問題を解決するのは「断熱」と「気密」!
断熱は、新築も中古もできる。
著者は、この10年、世界レベルのエコハウス(*)に住む。
*)エコハウスについて
環境省|エコハウス 21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業|エコハウスとは
簡単に言うとこんな感じかな・・・
・自然エネルギーが最大限活かされること
・環境に負担をかけないで建てられていること
「がまんの省エネ」が寿命とお金を減らす。
厚着でしのぐ、温度設定を控えめにするなどは効果も少し。
日本のエアコンはトップレベルだが、家の断熱性能は低いため、穴の開いたバケツ。
光熱費がかかるし、快適にならない。
空調している部屋とそうでない部屋の温度差が激しくなる。
海外から数十兆円かけて輸入した化石燃料を燃やした貴重なエネルギーを大気へ垂れ流している。
日本の2019年度時点の既存住宅の断熱性能
29% 無断熱(風雨がしのげる・温度湿度は外気並)
36% 少し断熱(昭和55年基準:断熱等級2)
22% 少し断熱(平成4年基準:断熱等級3)
13% ふつう?断熱(現行基準:断熱投球4)
断熱性能を表す数値を「UA値(外皮平均熱貫流率)」と言う。
小さいほど住宅の断熱性能が高くなる。
*UA値についてわかりやすいサイトがあったためリンク貼ります。
[H28年基準] 外皮平均熱貫流率(UA値) | 学ぼう!ホームズ君
UA値の国際比較を見るとビックリ。
アメリカ・イタリア・韓国・イギリス・ドイツなど、日本と同じ程度の気温帯の比較では、日本がドベ。
そして、傾向として、寒い地域になればなるほど世界と日本の基準は寄っていく。
日本は、国土交通省により、8つの気候区分に分けられている。
こちらに個人的にわかりやすかったサイトのリンクを貼らせていただきます。
地域によって同じ室温を保つために必要な断熱材の量は違う。
同じ断熱等級4でも地域によってレベルが異なってくる。
北海道以外は、世界と比べて低い。
衝撃的な違いは、世界との程度の差だけでなく、「義務化」されているかどうかも。
日本の断熱等級4は努力目標。
無断熱でも建てられてしまう。
欧米や韓国などでは、最低基準を法律で定めて義務化している。
現状の日本の断熱等級4では、海外では違法建築になってしまう。
(ショッキング!)
この断熱等級4も作られたのは25年前の1999年。
2022年にやっと見直し。
断熱等級5〜7が新設された。
そして、2025年から断熱等級4が義務化。
(やっとか!それでも等級4は海外では違法建築レベル)
アルミサッシが主流なのは日本だけ
住宅で最も熱が出入りするのが窓やドアなどの開口部から。
夏:74%の熱が侵入
冬:50%の熱が逃げる
(断熱等級4・アルミサッシ・ペアガラスの場合)
例え、ペアガラスでも、サッシ(窓枠)から出入りする。
先進国で冬に寒くなる地域で、アルミサッシが主に使われてきた国は日本だけ。
アルミは、樹脂製や木製に比べて1200倍もの熱伝導率がある。
そのため冬には結露ができ、カビが発生し、それを餌とすダニが増殖。
それがさまざまなアレルギー症状を引き起こすと考えられている。
断熱性能の高い家に引っ越すと、ほぼ全ての人がアレルギー症状が改善したとアンケートに回答している。
また、断熱性能に比例して、改善率も高まっている。
結露は、窓枠の端にもできる!
つまり、壁の中にもできる(=内部結露)。
拭き取ることができない(ガーン!)
柱が腐ったり、シロアリが増えたりする。
家の寿命や震災時の倒壊リスクも上がる。
樹脂サッシの普及率
<日本>
2011年 7%
2022年 26%
日本はアルミサッシが74%とアルミが主流。
海外の普及率はめちゃくちゃ高い。
樹脂でない場合でも木製サッシが多い。
<イギリス>
2016年 76%
<ドイツ>
2016年 64%
<韓国>
2011年 80%
窓の断熱性能 熱の伝えやすさを表す「熱貫流率=U値(W/m2・K)」
値が小さいほど高性能
日本の断熱等級4に必要な数値はU値=4.65(アルミサッシ・ペアガラスで実現)
海外の最低基準(ドイツ1.3 イギリス1.8 中国・韓国2.5前後)
ちなみに日本で今もよく見られるアルミサッシ・1枚ガラスだとU値=6.5
樹脂サッシ・ペアガラス(Low-Eガラス)にするとU値=1.6〜1.9
窓の改修は行いやすく内容によって効果バツグン!
樹脂サッシと聞くと・・・
耐久性を心配する人がいる。
バケツや洗濯バサミが紫外線でボロボロになるのを見ているため。
樹脂にもいろいろある。
洗濯バサミなどは「ポリプロピレン」
樹脂サッシに使われているものは「PVC(ポリ塩化ビニル)」
耐久性は証明済み。
日本では、樹脂の耐久性のなさを根拠に、外側がアルミ、中は樹脂でできた「アルミ樹脂複合サッシ」を推奨してきた。
断熱性能は、アルミサッシと樹脂サッシの中間くらい。
断熱性能が高くない上に、アルミと樹脂の結合部分で結露が起きやすいなど課題も指摘されている。
「寒さで亡くなる人が少ないのは北海道」
最近、夏が暑く熱中症で救急搬送をされる人が増えている。
最も多いのが自宅で熱中症になるケース(毎年およそ4割)。
その多くが高齢者。
しかし、夏より冬の方が圧倒的に気候でなくなる方は多い。
暖かい季節に対して寒い季節に、月平均死亡者の割合がどれくらい増えるか?
47都道府県のうちもっとも割合が少ないのは、まさかの寒いはずの北海道。
逆に亡くなる割合が最も増えるのは栃木県。
栃木県は北海道に比べ、倍以上も冬季死亡増加率が高くなる。
「最低室温18℃を守れない日本の住宅」
2018年「住宅と健康ガイドライン」 WHO(世界保健機構)
寒さから健康を守る最低室温=18℃
=18℃以上にすべき
居室によって差がでないように全館暖房が基本
日本は住宅の断熱性能が低いため間欠暖房が一般的
「ヒートショックで亡くなる方は交通事故で亡くなる方の6倍以上?」
ヒートショック・・・部屋間の温度差の大きさが健康に影響する例
冬の浴室・トイレなどで血圧が変動し、失神・心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こすもの。
暖房の効いたリビングと廊下・トイレの差は、平均15℃違うと言われている。
血圧の乱高下が循環器系に大きなダメージを与える。
浴槽で意識を失ったり、心筋梗塞などを引き起こし、浴槽で倒れたり溺れたりして亡くなる。
ヒートショックで亡くなる高齢者:毎年5,000名前後(2021年 1,750名)
全国の交通事故による年間死亡者:2,610名(2022年)
「暖かい家が健康寿命を延ばす」
これまで健康と断熱にはエビデンス問題があった。
やっと2014〜2023年 国土交通省と厚生労働省による「スマートウェルネス住宅等推進調査事業」が行われた。
これは建築分野の研究者と医師が共同で調査をした。
本書では一部その成果が紹介されている。
断熱改修により平均血圧は下がった(平均3.5mmHg)。
これで循環器系による死亡者を減らすことを目的とするようになった。
各種疾病の症状も改善。
「将来のお金が心配な人ほど断熱すべき理由」
新築ならエコハウス、既存住宅なら断熱改修を。
<新築>
最低限必要な断熱性能にアップ:70万円〜
断熱等級4 → 断熱等級7:300万円
その差額はいずれ回収することが可能(ざっくり21年で回収可能)
「住宅のトータルコストは光熱費だけではない」
設備の更新費用)エアコン台数に差、結露などによる住宅や家具の劣化
住宅のではないが、健康面の悪化による医療・介護費用の増大リスク
断熱は、後から追加するのは大変だから最初ケチらないようにしたい。
「住宅の燃費性能のものさし」
EU(欧州連合)では住宅の燃費性能の表示精度を設けることが義務づけられている
エネルギーパスという証明書がある
年間を通して快適な室内温度を保つために必要なエネルギー量
=床面積1平方メートルあたり◯◯kWh(キロワットアワー)
日本では共通のものさしがなく各社独自にアピールしてきた
日本では住宅の価値が築年数で決まる
EUでは燃費性能で決まる(燃費のわるい家は割安になる)
「燃料費で日本は赤字に」
日本のエネルギー自給率:13.4%(2021年)
電力に限っても自然エネルギーの割合:20.3%
他は海外からの輸入
2022年 化石燃料の輸入額 約33.5兆円
収支 21.7兆円の大赤字
この33.5兆円を日本の世帯数(5,431万)で割る
=1世帯あたりの負担額 61.7万円
しかも買った化石燃料は燃えてなくなっている
(もったいなーーーい!)
住宅は輸出できないため国際競争にさらされない
住宅業界の怠慢を容認してきたのは国土交通省
消費者自身が関心を持ち知識を得ねば!
「ようやく起きた変化」
2025年からはこれまでの最高(断熱等級4)が最低ラインに義務化。
2023年からは断熱リフォームへの補助を大規模に行っている。
「エコハウスとは何か?」
本物のエコハウスは、長期に渡り、社会や環境、住まい手にかける負担が少ない家。
サステナブルな住宅かどうかで判断する。
エネルギー消費が少なくてもより快適に過ごせる住宅。
健康と家計を守り、脱炭素に貢献できる住宅。
ドイツでは「パッシブハウス」という世界最高峰の超省エネ住宅がある。
「パッシブハウス」
ドイツの世界最高峰の省エネ住宅。
一定の室温を保ちつつ、年間で暖房に消費するエネルギーの上限は1平方メートルあたり、15kWh。
ちなみに日本の断熱等級4だと127.8kWh。
「衝撃の宿泊体験」
リビングダイニングは吹き抜けで2階と空気が循環
各部屋のドアは基本的には開けっぱなしで温度ムラが起きにくい
トリプルガラス&樹脂サッシのおかげで国道沿いでも静か
断熱等級4の基準(*)の倍の厚みの高性能グラスウールより高い性能を誇る断熱材入り
*)6地域(東京)の基準となる断熱材
高性能グラスウール 床:105mm 壁:85mm 天井:155mm
「日本一の猛暑 VS エコハウス!」
日本一暑い熊谷と同じレベルで暑い川越エリア
建設中の住居を見学
外気温33℃ 湿度75%
家に入ると別世界で涼しい
エアコンOFF状態
少し前まで動かしていたエアコンも簡易型の4畳用1台のみ
それで室温25℃ 湿度60% をキープ
「エコハウスに住んでみた」
夏場も窓の外の外付けブラインドで窓から入る直射日光を遮っておけば快適。
「アレルギー性鼻炎が軽減」
エコハウスに住んでティッシュの消費量が1/3に減少。
花粉・ハウスダストのアレルギーの薬が不要に。
理由は、花粉が入ってきにくく、結露やカビが発生しないためと考えられる。
「エコハウスは「魔法の家」ではない」
夏に直射日光を中に入れると従来の住宅以上に熱が中にこもる
換気装置を止めてしまったり塞いでしまったりすると効率的な換気ができなくなる
→ お風呂から出た後は10〜20分は浴室換気扇をONしないとカビリスクあり
高橋さんちのKOEDO低燃費生活 というブログでエコハウスでの暮らし方のコツを発信されている
「断熱大国ドイツを訪問」
ドイツでは、トリプルガラス+樹脂サッシが普及。
ホテル、新築の賃貸アパート、市役所、学校などの公共施設。
観光地の荷物検査をする仮設小屋までも・・・!
断熱改修も国が補助金を出している。
国外から化石燃料の輸入量が減るため国にも利益になる。
「エコハウス住宅と魔法瓶の違い」
1.窓がある
直射日光が当たり続ければ暑くなるため窓の外側で日射を遮ることが効果的
2.中に人がいる
人は自身が熱を発する
3.換気が必要である
空気を遮断された魔法瓶の中では人は生きられない
健康維持のためには新鮮な空気を常に循環させる必要あり
「高断熱と高気密はセット」
気密性が低いと計画的な換気ができない
気密性が高いとどの部屋にも新鮮な空気を循環させることができる
「エコハウスは1時間で家の半分の空気が入れ替わる」
換気装置によって適切に換気が行われた場合、エコハウスは1時間で家の半分の空気が入れ替わる(衝撃!)。
外気には、花粉・砂埃・PM2.5といった汚染物質がずっと飛び交っている。
窓を開ければどうしても飛び込んでくる。
換気装置には、フィルターがあり、新鮮な空気を取り込む。
窓を一部だけ開けると空気がよどんでしまう場所ができやすい。
「換気設備の種類」
第三種換気:一般的な住宅で多い
第一種換気:多くのエコハウスで採用。熱交換をすることにより空調にかかるエネルギー消費が少なく済む。ダクト式とダクトレス式がある。
第三種に比べて第一種は初期費用こそ高くなるが、空調のランニングコストは安くなる。
本書とは関係のないサイトですが、換気についてまとめてあるサイトがあったので掲載します。
「エコハウスを体験できるカフェ」
体験するとファンになる
「重要なポイントは太陽との向き合い方」
夏は太陽熱を窓から室内に入れないようにする
冬は逆に太陽熱を取り込む工夫をする
太陽は日照時間・角度などは予測可能
自然を活かす考え方による家づくり =「パッシブデザイン」
「エコハウスの条件」
・断熱気密性能&換気
・太陽に素直な設計
・エネルギー消費が少なくても快適に過ごせる住宅
「LCCMと太陽光発電」
家は自然素材やリサイクルしやすい素材がいい。
LCCMとは、ライフ・サイクル・カーボン・マイナスのこと。
LCCM住宅:排出されるCO2を家で生活する時に排出されるものだけでなく、建設時やメンテナンス、解体時を含めたライフサイクルでマイナスにしていく住宅のこと。
実現には、高断熱と太陽光発電が必須。
もし、予算がギリギリなら断熱をとる。
太陽光発電は後からでも付け加えることができるため。
「できるなら太陽光発電も」
設置コストはかかるが、固定価格買取制度(FIT)を使うと、ほとんどの場合、10年前後で元が取れる。
電力の買取価格は下がってきたが、設置費用も下がっている。
太陽光発電を設置する主目的は、売電でなく、高騰する光熱費の削減。
第3章 エコハウスの選び方と断熱リノベーション
「これからの住宅は断熱等級6以上」
HEAT20:冬の東京で無暖房で8℃を下回らない。
これでいいわけがないと5〜7ができた。
エコハウスの専門家は、等級6以上が適切と。
理由:健康を守りつつ光熱費が上がらないという最低ライン。
前真之准教授も等級6+ α を推奨。
等級6(HEAT20グレード2)だと概ね13℃を下回らない
等級7(HEAT20グレード3)だと概ね15℃を下回らない
「ZEHの性能は高くない」
等級5とほぼ同じ性能の家を日本ではゼロエネルギーハウス=「ZEH(ゼッチ)」という名で販売されている。
ただ、注意が必要で、ゼッチ=等級5の全館冷暖房は、等級4の間欠冷暖房よりもエネルギー消費量は40%増える。
ゼッチレベルでは、樹脂複合サッシでもクリアできるレベル。
断熱性能を示すUA値も多くの先進国では違法建築レベル。
「竹内昌義教授によると」
等級4から等級6にレベルアップするには・・・
・窓のサッシをアルミから樹脂に変更
・天井などに断熱材を追加
それだけで可能となる。
費用は、一般的な30坪の家で約90万円〜
(10〜15年で回収できる金額)
等級4から等級7にレベルアップするには・・・
200〜300万円
(25〜30年で回収できる金額)
「工務店・ハウスメーカー選びの3つのポイント」
1)断熱性能(UA値)等級6以上あるか
2)気密性能(C値)1.0以下(できれば0.5以下)
3)夏の日射遮蔽と冬の日射取得ができる設計かどうか
モデルハウスの周りをぐるっと回って、室外機の数をチェック。
室外機が6つ7つあれば、エアコンが必要な家。
エコハウスであれば各階1つずつで十分なはず。
質問をするなら以下のように。
1.御社の標準仕様の住宅の断熱等級及びUA値はいくつか?
2.すべての窓はオール樹脂(複合でなく)サッシが標準仕様か?
3.御社の標準仕様の住宅の断熱等級及びC値はいくつか?
全棟で気密測定をしているか?
(全棟で気密測定をしている会社は信頼がおける)
4.換気の方法・仕組みを教えてください
5.御社の標準仕様の住宅では、窓の外側でどのような日射遮蔽をしているか?
冬の日射取得の工夫はどのようにしているか?
(立地や方角で適切な対策は1軒ごとに違う)
(夏の日射角度に合わせて軒やひさしをつけているか?)
(日射遮蔽のために窓外にブラインドなど採用してるか?)
5の点にうまく対応できている会社は非常に限られる。
あとは、実際に宿泊体験を希望したり、すでに建てた施主さんに話を聞かせてもらえないか依頼するといい。
安さには裏がある可能性あり。自分の肌や目と耳で確かめたい。
「改修ポイント1)内窓はコスパ最強の対策」
最優先は、熱の出入り口となる窓対策。
窓リフォームについてネット上のリンクを掲載する。
方法として、最も手軽で安い内窓は、どんな住宅にもおすすめ。
マンションの場合は、外の窓を交換できないため、選択肢は内窓のみ。
内窓のデメリットは、窓を2回開けること。
内窓は、断熱リフォームの中で、最も手軽で、費用対効果に優れている。
内窓には、いろんな仕様があるが、オール樹脂サッシで、ガラス2枚のタイプのものが標準的。ガラスに薄い金属膜を蒸着して断熱性能を上げたLow-Eタイプのものが効果が高いためおすすめ。
「改修ポイント2)遮熱は窓の外で」
夏の日射遮蔽(遮熱)も重要
直射日光が入り続ければ断熱していても室温上昇が起こる
室内の対策(カーテンなど)では外から入る熱の40%ほどしか防げない。
窓の外で防ぐと室内に入る熱の80%ほど減らすことができる。
窓の外に設置できない場合は、次善の策として、内側にカーテンなどを取り付ける。
その場合も空気層のあるハニカムブラインドなどがおすすめ。
「改修ポイント3)寒さ対策なら床」
窓の断熱効果は大きいが古い家の場合は足りない。
気密性も弱い。
窓の次の優先順位について、費用対効果で言えば、床・天井 → 壁 → 気密 という順番になる。
気密性を高めるのは難しく、費用もかかるため割愛。
比較的やりやすいのは床。
床の改修は、直に接するため、冬の寒さ対策に効果的。
工事は、床下に潜り込んでボード系の断熱材を貼り付ける工事が一般的。
床を剥がす必要性がないため、工事は1日前後、費用の相場も20坪で30〜40万。
床暖房は人がいないところも暖め続けるため、かなりのエネルギーが必要。
「改修ポイント4)暑さ対策は天井」
太陽の熱を最も受けるのが天井。
天井の断熱材が薄いとエアコンでも涼しくはできない。
等級4の場合、天井の断熱材は150mm前後。
そこに追加して合計300mmにすることでかなり改善。
天井を剥がさずに行う工事の場合は15〜40万円。
遮熱塗料は、効果がさまざま。効果も次第に落ちるため、何年か後には塗り直す必要がある。しかも、一般的に冬の断熱効果はない。
「改修のポイント5)ゾーン断熱」
外断熱:壁の外側から断熱材を貼り付ける
内断熱(付加断熱):室内側に断熱材を追加する
外断熱と内断熱について、書ききれないため、ネット上の外部サイトのリンクを掲載。
大きな住宅をリフォームしようとするとコストが大きくなる。
そこで、家の中でゾーンを区切って断熱する「ゾーン断熱」という方法がある。
今は、1階しか主に使っていない場合、1階の窓と床、壁のみを断熱する。
予算に余裕があれば、天井や気密工事も検討してもいい。
「断熱材の種類」
断熱材の種類について、外部サイトのリンクを掲載。
「リフォーム業者選びのポイント3つ」
1)「建設業許可」の免許を持っているか
実はリフォーム業者には資格は不要
宣言すれば誰でもその日からリフォーム屋
2)リフォーム経験
現場での応用力が求められる
新築だけだと対応できない可能性がある
3)過去のリフォーム事例や現在進行中の現場の見学
願い出て見せてもらう
見せてもらえないということは何か事情があるかもしれない
「お金をかけずに断熱するDIYリノベ」
自分でやる場合、費用対効果と労力を考えると、窓と床が中心になる。
最も薦められるのは内窓。
ホームセンターなどで1万円くらいでキットが売っている。
性能は高くなく、隙間ができたり、耐久面で心配あり、大きな掃き出し窓には不向き。
耐久性のあるものを自作することも慣れた方ならでき、YouTubeでも紹介されている。
夏の暑さ対策ならすだれ。
窓の内側なら厚手の断熱カーテンやハニカムブラインドがおすすめ。
「断熱DIYワークショップ」
床の場合
賃貸だとカーペットの下にアルミシートを敷いたり畳の下に断熱ボードを入れる
プロが指導する断熱DIYワークショップなどで行われるのは、床下に潜り込んで断熱材を貼り付けつのではなく、床の上に断熱ボードを敷き、その上から新しい床材を貼る方法。
この方法は、床が数cm高くなるものの、床下に潜りこむよりは楽に工事ができ、費用も安く済む。
この他の工事は素人だけでは難しいが、指導してくれるプロと一緒であればできる。
各地でワークショップが開催されるようになった。
指導してきた建築家の竹内昌義教授は「省エネで暖かい暮らしは、お金のある人だけでなく、DIYでも実現できる方法があることを示したかった。」
「断熱で社会課題を解決!」
1)賃貸アパートの高性能化
2)中古住宅のリノベーション
3)学校など公共施設の断熱
「賃貸アパートは暑い・寒い・うるさい」
木造賃貸アパート → 暑い 寒い カビ うるさい
オーナーが住まないため軽視されてきた
選ぶ時はあまり気にされない「断熱性」「遮音性」が住んでから不満点としてよく聞かれる
投資目的で建てられる賃貸住宅は、初期投資を抑えたいがため、そこが軽視される。
そもそも断熱性能の高い賃貸住宅を求める人がいなかった。
「高性能賃貸アパート 先行事例1」
パティオ獅子ヶ谷(ししがや) 神奈川県横浜市 2021年春入居開始
断熱のために追加でかかった費用 11%(約320万円)
入居費は、周辺の相場より 15%ほど上乗せ
「高性能賃貸アパート 先行事例2」
弍番町アパートメント 埼玉県東松山市
家賃は相場の2割増。駅から徒歩4分。
「問題は資金調達」
金融機関の融資の目安 建物の「法定耐用年数」
= 税法上その建物の価値が0になるまでの年数(国税庁)
例) 木造アパート 22年 鉄筋コンクリートマンション 47年
金融機関も地域未来への投資になるから知識をつけて融資を積極的にすべき
高性能アパートは、初期コストも高いから地域経済に貢献し、省エネになり、エネルギー購入のためのお金の支出を減らすことができる。
「空き家であふれる日本」
中古住宅の断熱リノベーション
空き家:1年以上誰も住んでいない家のこと
2018年時点 空き家率 13.6%(846万戸)
= 7〜8軒に1軒が空き家
解体ではごみが出る 燃やせばCO2が増える
環境省「2040年代前半に全国のごみの最終処分場がいっぱいになる」
「中古住宅の断熱リノベーション 先行事例1」
山梨県北杜市 築40年の平屋
断熱等級7 エネルギーは自然エネルギー100%
「中古住宅の断熱リノベーション 先行事例2」
空き家断熱賃貸 作り手たちのアトリエ
改装にかかった費用は、新築と比較して約1000万円削減
「守られない室温基準」
学校など公共施設の断熱
事務所衛生基準規則(厚生労働省)
(2022年時点)「18〜28℃になるように努めなければならない」
学校にも教室等の温度基準(学校環境衛生基準)文部科学省
(2018年まで)「10〜30℃であることが望ましい」罰則なしの努力目標
ドイツ 学校校舎は一定の断熱 全館暖房 暑い日は休校
欧州 「寒さ、暑さは人権問題」と認識
「エアコンとセットで断熱も」
2018年 学校の室温規定が修正
10〜30℃であることが望ましい
→ 17〜28℃であることが望ましい
→ 18〜28℃であることが望ましい
(WHOが2018年に冬の室温18℃以上と勧告したことが影響)
エアコン設置率 2018年 約60% 2022年 約96%
ただし、エアコンの導入と断熱・気密をセットにしないと温度管理できない上にコストだけがかかる。
「高校生が始めた教室の断熱改修」
教室1つ分の改修に60万円以上を地元から集めた
冬、ストーブをつけなくても2〜3℃暖かくなった
ストーブをつけるとすぐに暖まるようになった
極端な温度ムラもなくなった
夕方も寒くならずに生徒の学習意欲も持続するようになった
温度だけでなく、木製の壁やサッシに囲まれ雰囲気よくなった
この断熱DIYワークショップは全国に広がり2023年10月現在30ヶ所近くにもなっている
「夏の暑さ対策に特化した学校断熱事例」
さいたま市立芝川小学校の校舎
断熱前と比べて6℃以上下がり
エアコンの効きも格段に向上
授業に集中できるようになった
「2022年冬には換気の改修も追加」
窓開け換気は温度管理が難しい
断熱しても窓を開けて熱風や寒気が入れば台無し
換気扇を改造、室内のCO2濃度が一定以上になると稼働
濃度が下がると止まるデマンド制御の仕組みを導入
窓開け寒気は不要となり適切な換気量を確保しながら適温を維持
デマンド制御の装置は数万円で設置可能
「学校の断熱改修は行政の責務」
公共施設の断熱改修の課題 「資金面」「継続性」
先行事例も自治体も協力的だったものの、お金は出しておらず、関わった地元工務店はほぼボランティア。
費用は、クラウドファンディングなどで集めている。
今後継続して行っていくためには、国や自治体が予算をつける必要がある。
断熱した費用を光熱費削減で回収しようにも、学校は長期休みや稼働が日中のみであるため、回収期間が住宅のそれよりも難しい。
子どもたちへの未来への投資であり、そもそも人権を守ることに他ならない。
「仙台市・自治体予算で公立小学校3教室を実験的に断熱回収(2020年夏)」
「NPO法人自治経営 学校断熱改修」
岡山県津山市
鳥取県米子市
「断熱は持続可能なまちづくり」
「脱炭素」
激しさを増す気候変動
世界の平均気温観測史上最高
集中豪雨による水害の激化・旱魃・山火事
生物多様性の消失・サンゴ礁の白化・・・
脱炭素のカギを握る新築住宅と既存住宅
「2023年から窓断熱、断熱リフォーム、高効率設備合わせて3000億円規模の補助金」
元々は税金だが、同じ税金でもガソリン購入のための補助金とは違いがある。
断熱などへの補助金は未来への投資(ランニングコスト減・燃料輸入量減)
安くなった円&高くなったガソリンへの補助金はただの一時しのぎの補助金
「エネルギー安全保障」
省エネ改修を国や自治体が率先してやるべき理由
欧州:エネルギー自給率を高め安全保障を確保する狙いがある
日本:一次エネルギーの自給率が12%程度しかない
日本:毎年数十兆円をサウジアラビア・オーストラリアなどの資源大国に払い続けてきた。
「自然エネルギー」
日本は2023年現在も自然エネルギーの割合は20%程度
建物の断熱を強化し、消費エネルギーを30〜40%減らし、屋根の上に太陽光発電を設置した上で高効率機器を導入すれば、消費エネルギーをほぼゼロにすることも可能。
欧州では、すでに50%以上を自然エネルギーで実現している国も多数ある。
「鳥取県の独自基準 NE-ST(ネスト)」
状況に応じて10万円〜100万円の補助金を出す
事業者の育成に力を入れた
県の説明会に集まった事業者の4割「省エネ計算を行っていない」と回答
県の技術研修の参加事業者すべて高性能住宅を建てられるようになった
補助金を受けるための条件は、県の技術研修を受講して登録された事業者が施工。
現在、戸建住宅を建てる事業者の8割が登録している
県内に本店を置く登録事業者が設計・施工をすることを要件として助成
地域経済の活性化にもつながっている
「既存住宅もRe NE-ST(リネスト)」
鳥取では、県内すべての住宅を2050年までに最低でも等級4(できれば5)にしていくことが目標
こちらもレベルに応じて50〜150万円の補助金を助成
「賃貸集合住宅も」
新築も改修もどちらでも
1戸あたり10万円〜50万円までの補助金を助成
国の省エネ基準の賃貸集合住宅をT-G1レベルに上げるためには1戸あたり工事費が19万円増える計算になる。
断熱工事で光熱費は年間1戸あたり1万円減らすことができる
20年単位で見れば工事にかかった19万円も回収できる
工事にかかった費用を家賃に上乗せしても光熱費と合計すれば居住者が支払う費用は変わらない。
オーナーは補助金も含めれば得する
2023年11月現在は1軒建設中(ブログ投稿時は完成)
(実際に先日行ってみました)
「鳥取県木造住宅価値の見直しを挑戦」
木造住宅の価値が22年経つと一律ゼロになるということを見直そうと挑戦中
日本の家屋が取り壊される年数が欧米に比べ短い
日本38年 イギリス80年 アメリカ66年 など
住宅の流通シェアにおける中古住宅割合 14.5%(他国に比べて低い)
イギリス85% アメリカ81% フランス69%
「現在鳥取市で検討されている住宅を評価する新しい指針」
(2024年度から始められる予定)
・屋根・外壁などの使用に合わせて評価
・各部位のリフォーム状況に合わせて目標使用年数を延長し直し
・県の研修を受け認定された不動産事業者が基準をもとに査定
→ 高性能住宅の資産価値が適正に評価される
→ 機能不全になっていた中古住宅の流通も活発化するかもしれない
「神奈川県横浜市」人口 377万人
横浜市は、2023年に複数の工務店や住宅メーカーなどと提携して「コンソーシアム(共同事業体)」を設立。
そこに参加する「エネルギーまちづくり社」が希望する工務店に技術講習を実施することになった。
登録事業者になると「よこはま健康・省エネ住宅」を建てることができる。
ecohouse-conso.city.yokohama.lg.jp
断熱等級6〜7相当 レベルに応じて最大200万円までの補助金
「脱炭素に挑むニセコ町」人口 5000人
ニセコ町は雪が多く、太陽光発電をはじめとする自然エネルギーの適地がほとんどない。
建物の断熱の強化に最も力を入れている。
公共施設は新築も改修も徹底的に行う。
「100年使える超省エネ町役場」
日本トップ級の省エネ性能。北海道ニセコ町の新庁舎が体現した「創エネの前に断熱」
2021年3月に完成
土日を挟んでも冷えきらず職員が快適に健康に働ける
災害時の防災拠点の役割も
プロパンガスを燃料に電気と熱を同時に作るコージェネレーション設備(発電出力約10kw)を導入
非常用発電機と併用で停電時でも最大3日間は解放スペースの電気供給はできる仕組みになっている。
「住民の声を活かしたサステナブルタウン」
エリア全体を対象にしたプロジェクト
9haの土地に全13棟の集合住宅
完成時は町民の1割(450人)が入居できる
全ての街区の完成は2029年
開発 株式会社ニセコまち(まちづくり会社)
「ニセコ町にすでにあるアパート」
株式会社ニセコまちは、住民説明会を40回以上にわたって開催。
こうした建物やまちづくりの必要性について説明しながら、丁寧な対話を重ねてきた。
「環境と経済は両立できる」
鳥取県やニセコ町などはどうしてできるのか・・・
脱炭素のための政策を通して地域の課題を解決していくという考え方が全ての部署に共有されている
それを浸透させるポイント「環境と経済は両立できない」という思い込みを変えること
だった(千葉商科大学 田中信一郎准教授)
快適性と省エネも断熱気密を強化することで実現できる。
「日本は今ある住宅の価値を上げていかないといけない」
そのために量・質ともに長期的にみてルール変更含めて計画的なまちづくりを行っていくことが大切。
国民の資産を長期的に減らさないための都市計画や住宅政策が必要。
「断熱が日本を救う」
今まで目を背けて先延ばしにしてきた住宅の外部コスト(隠れたコスト)を見なかったことや放置しておいたりせず、しっかり意識し、仕組みを見直していく必要がある。
「まずは内窓をつけるところからやってみよう・・・」
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めちゃ読みやすくておもしろい本でした!
何より危機感とともに行動したいワクワク感が生まれてきました。
この記事を読んでより詳しく知りたいと言う方は、ぜひこちらの本書を手に取ってみてください。
初心者にも分かりやすく書いてあります。
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それではまた!!